VPT(歯髄温存療法)とは?—歯をできるだけ残すための最新治療
こんにちは。あづみのうえはらおとなこども歯科医院の院長、上原龍一です。
本日は「VPT(Vital Pulp Therapy)」についてお話しします。
虫歯が進行すると、一般的には神経(歯髄)を取る「根管治療」が必要になります。しかし、VPT(歯髄温存療法)を適用できれば、歯の神経を残しつつ、機能を維持することが可能になります。
「できるだけ歯を残したい」「神経を取ると歯がもろくなると聞いて不安」という方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
1. VPT(歯髄温存療法)とは?
VPT(Vital Pulp Therapy)とは、歯の神経(歯髄)を保護・保存する治療法です。
通常、虫歯が進行して神経まで達すると、炎症や感染が広がるため、根管治療(歯の神経を取り除く治療)が行われます。しかし、神経を取ると歯がもろくなり、長期的には歯を失うリスクが高まることが知られています。
そこで、VPTを行うことで、できるだけ歯髄を残し、歯の寿命を延ばすことが可能になります。
✅ VPTの主な目的
- 歯髄(神経と血管)の健康な部分を温存する
- 根管治療を回避し、歯の寿命を延ばす
- 痛みや炎症のリスクを抑えながら、歯の機能を維持する
2. VPTの種類
VPTには、症状や歯髄の状態に応じていくつかの方法があります。
① 間接覆髄(Indirect Pulp Capping)
🦷 適応:虫歯が深いが、歯髄に明らかな炎症がない場合
🦷 方法:虫歯を除去し、歯髄を保護する薬剤を塗布して封鎖
この方法では、歯髄に直接触れずに治療を行うため、成功率が高く、リスクが低いです。
② 直接覆髄(Direct Pulp Capping)
🦷 適応:虫歯の除去中に歯髄が一部露出した場合
🦷 方法:露出した歯髄を保護する薬剤を塗布し、修復材料で封鎖
歯髄の健康な部分を保護しながら治療を行うため、適切な条件下であれば成功率が高いです。
③ 部分断髄(Pulpotomy)
🦷 適応:歯髄の一部に炎症があるが、残りの部分は健康な場合
🦷 方法:炎症がある歯髄のみを除去し、健康な部分を残す
部分断髄は、特に小児の歯(乳歯や生えたばかりの永久歯)に適用されることが多いですが、最近では大人の永久歯にも有効であることがわかっています。
④ 全断髄(Full Pulpotomy)
🦷 適応:歯髄の大部分に炎症があるが、根の先には炎症がない場合
🦷 方法:歯髄をすべて除去し、根管治療の代わりに封鎖
この方法は従来の根管治療と異なり、歯の構造をより多く残せるため、歯の強度を維持しやすいです。
3. VPTの成功率と適応条件
VPTはすべてのケースに適応できるわけではなく、成功率にも影響を与える条件があります。
成功しやすい条件
- ✅ 炎症が軽度で、歯髄の健康な部分が十分に残っている
- ✅ 露出した歯髄に感染がない
- ✅ 適切な材料(MTAやバイオセラミック)を使用する
- ✅ 無菌的な環境で治療が行われる
成功率は70〜90%とされ、適切な診断と処置を行えば長期的に歯を保存できる可能性が高まります。
4. VPTに使われる材料
VPTの成功には、使用する材料が重要です。
① MTA(Mineral Trioxide Aggregate)
- 強い封鎖性と殺菌作用がある
- 炎症を抑え、組織の再生を促す
- 長期的に安定した治療効果が期待できる
② バイオセラミック材料(Biodentineなど)
- MTAと同様に高い封鎖性を持つ
- 取り扱いやすく、治療時間を短縮できる
これらの材料を使用することで、従来よりも高い成功率が期待できるようになっています。
5. VPTのメリットとデメリット
✅ VPTのメリット
- 神経を温存できるため、歯の寿命を延ばせる
- 根管治療を回避できる可能性が高い
- 痛みが少なく、治療回数が少ない
⚠️ VPTのデメリット
- 適応できるケースが限られる(進行した炎症や感染がある場合は不向き)
- 成功しなかった場合、最終的に根管治療が必要になることがある
6. まとめ
- ✅ VPT(歯髄温存療法)とは、虫歯が深くてもできるだけ神経を残す治療法である
- ✅ 成功率は70〜90%で、適切な診断と処置を行えば歯の寿命を延ばせる
- ✅ MTAやバイオセラミック材料を使用することで、より高い成功率が期待できる
- ✅ すべてのケースに適用できるわけではないため、専門的な診断が重要
当院では、患者様の歯をできるだけ長く健康に保つための治療を提供しています。
「できるだけ神経を残したい」「歯の寿命を延ばしたい」とお考えの方は、ぜひあづみのうえはらおとなこども歯科医院までご相談ください。
上原龍一
あづみのうえはらおとなこども歯科医院